フランス北西部、ぶどう畑はヴォージュ山脈の東斜面に、幅1~5km、南北には約110kmにわたって広がっています。この山脈のおかげで、ぶどう畑は特殊なミクロクリマ(微気候)に恵まれています。冬は寒く、夏は暑く、晩秋の好天は特別で、ぶどうがゆっくりと成熟し、遅い摘み取りになります。土壌は花崗岩、石灰岩、砂岩など多種の岩がなすモザイクで、さまざまなぶどう品種が育ちます。
アルザスで栽培しているのは、Riesling(リースリング)、Gewurztraminer(ゲヴルツトラミネール)、 Pinot Gris(ピノ・グリ)、 Muscat d'Alsace(ミュスカ・ダルザス)、Sylvaner(シルヴァネール)、Pinot Blanc(ピノ・ブラン)、Pinot Noir(ピノ・ノワール)の7つの品種です。
これらの単一品種でワインが造られ、ぶどう品種名がそのままワイン名になっています。この他、51の特別な畑で、ぶどうの収穫量や糖分の割合など生産条件が課せられて造られるAOC Alsace Grand Cru(アルザス・グラン・クリュ)や、遅摘みのVendanges Tardives(ヴァンダンジュ・タルディヴ)、貴腐ワインのSélection de Grains Nobles(セレクション・ド・グラン・ノーブル)、シャンパーニュと同じ方式で造られる発泡酒Crémant d'Alsace(クレマン・ダルザス)などがあります。
《アルザス・リースリング》 の酸味と、お料理の複合的な酸味が爽やかにマッチ。また、鱚の昆布〆のねっとりとした食感が、リースリングのグリセリンによる柔らかな感触と調和する。
トマトの酸味と、青柚子の香りが 《クレマン・ダルザス》 と良く合う。トマトを焼くことで香りが増し、さらにマッチ。また、お料理の鮮やかな色合いと、優しい出汁のジュレ、生き生きとした 《クレマン・ダルザス》 の泡、そして両方の持つ爽やかな酸が食欲をそそる。
とろとろに煮込まれた豚肉の脂肪分と百合根のコク、オリーブの香りが、華やかでスパイシーな香りをもち、味わいに厚みのある 《ゲヴルツトラミネール》 にとても良く合う。また百合根とオリーブオイルのなめらかな食感も、《ゲヴルツトラミネール》 に共通するものがある。
京料理「木乃婦」三代目。
大学卒業後「東京吉兆」にて修業後「木乃婦」若主人となる。シニアソムリエの資格をもち店では「ワイン献立」なども提供している。京都大学農学研究科修士課程で「おいしさの研究」などに取り組み、日本料理界を牽引する一人として活躍している。NHK「きょうの料理」講師。
著書には「10品でわかる日本料理」(日本経済新聞出版社)「和食の道」(IBCパブリッシング刊)がある。
アルザスワインといえば白ワイン。日本料理には白ワインがぴったりだと思うのですが、特にアルザスワインは酸を基調に味わいのしっかりしたワインで、熟成するとその奥深さが見えてきます。日本料理の奥深く繊細な味わいと、デリケートでありながら、力強さを持つという共通点を持っていると思います。 今回の献立はぜひご家庭でも試していただきたいものです。ワインと日本料理を合わせるには味わいはもちろんのこと、香りや食感、舌触りや、口中に残る香りなど、いろいろな角度から見ていただき合わせていただければと思います。
料理研究家。20歳代の大半を料理習得のためフランス・パリで過ごす。
帰国後、服部学園国際部ディレクターを経て、自宅でフランス料理教室を開く。
TVや書籍を通じ作りやすく美味しいレシピを提案している。
また2008年よりオリジナル・キッチン道具プロデュースも手掛けている。
2014年、フランス政府より農事功労章シュヴァリエを受章。著書多数。